「……ふ、ぁ……、はぁっ……」
絡まっていた腕を乱暴な仕草で解き、彼のベルトに手をかけながら深いキスを施す。
なかば意識の飛んだままの彼は、男にキスをされているというのに拒む気配も見せず、
ただその快楽だけを追い求めているように見えた。
舌を絡め吸いだせば、彼も同じように舌を絡め返してきた。
身体を熱くしたまま交わす深いキスは、ただただ甘く、身体を痺れさせる。
唇を合わせたまま彼のシャツをたくしあげ、白くなめらかな身体に手を這わすと
彼の身体がふるふるっと小刻みに震えて、俺の腕をか弱く掴んだ。
「……っ、 さわださん……、かわいい、です……」
はぁはぁ、と忙しなく胸を上下させて呼吸する彼の胸の上で、ちいさな尖りが淡く色づいて俺を誘っていた。
それを指先でそっとはじけば、彼の口から「…あぅんっ」と悩ましい声が洩れる。
――…俺は、とても興奮していた。
男を相手にしているというのに、頭の中は赤く血がたぎったまま。
……こんなに興奮したこと、女相手にも無かったかもしれない……。
そのまま唇を滑らせ、可愛らしい耳に舌を這わせた。
特に耳の中は執拗に。
「!! ―――…うぅんっ…、あっ…、んんー……!」
「さわださん、は、……耳、弱いんですね」
ぴちゃぴちゃといやらしい水音が部屋に響いた。
じゅっ、じゅっと、己の口からあふれた唾液をぬりこめて、彼のやわらかな皮膚ごと吸う。
耳の下にちいさな赤い痕が付いた。
それに俺は満足すると舌を首筋に這わせたまま、両の手を彼の太ももに持ってゆき、ズボンを履いたままの足を大きく広げて
尻を突き出させた。
――…そして、己の猛ったものを彼のソレにこすり合わせる。
「―――…ヒッ……!!」
「……気持ちいいでしょう……?大丈夫、ちゃんと擦ってあげますから……、いまはこれで我慢してくださいね」
服越しに熱くなっているものを擦り合わせる行為は、少しじれったくて、ぴりぴりと感じる快感が気分を高揚させた。
浅く腰を動かしながら、なめらかなやわらかい皮膚を堪能する。
細い首にはいくつもの赤い痕が散って、目の前の人がまるで自分の所有物のような気さえ起こさせる。
そして、指で十二分に愛撫を施した赤い乳首を、大きく開けた口の中へと招き入れた。
「! あっ…、あぅっ、あぁぁ……ん…―――」
じゅう〜っとまるで赤子のように思いっきり吸っては乳輪を尖らせた舌で輪を描くようにたどる。
少し力を入れると彼の身体は生きのよい魚のように、びくびくっと大きく撥ねた。
それに俺は気をよくすると、指を胸で蠢かせたまま舌だけを下へ下へと這わせていった。
少しくぼんだ形の良い臍にちらりとそれを差し入れ、腹のまわりにも赤い花びらを散らしてゆく。
――…そしてベルトの外れたズボンに手をかけると、ジジジ、と音をさせながら、ゆっくりとジッパーを下ろした。
「――……熱いですね、それにちょっと濡れてます…」
口の端に笑みが浮かぶ。
彼の顔を覗き見ると、深い愛撫に耐えきれなくなったのか、赤い舌を見せたまま、大きなひとみを瞼の下に隠して、
透明な滴を流していた。
その光景に背筋を駆け上がる背徳感。
ゾクゾクと身体の芯が震えた。
――…そして、彼の欲望に手をかけると、それをゆっくりと手のひらで包み込み、大きく口をひらいて
それを口内に受けとめた。
「! いゃぁぁぁ………!」
「――――…ふふ……、可愛い色ですね……。………大丈夫、やさしくしますから」
自分のものよりもひとまわり小柄なそれを、わざとじゅぶじゅぶと音を立てて扱いてゆく。
彼の震える手が、己の髪をまるで抗議するかのように掴んだけれど、儚く頭皮を撫でるその指先さえ、
後ろめたい快感へと繋がってゆく。
今にもはちきれそうに赤く腫れたそれを丁寧に愛しながら、可愛くゆれている丸みをこりこりと手のひらの中で転がした。
「……あ……、うぅ…ぁぁ……」
――…すると身悶えるように身体をゆらして、彼がそれを口内に強く押し付けてきた。
―――……限界が近い……。
少し強めに吸い上げるように扱くと、頭上で吐き出される吐息交じりの悲鳴が、いっそう艶を帯びた。
「―――……いゃあ…、あぁぁぁぁぁ――………!!」
甲高く響いたそれと共に、勢いよく吐き出される精液。
玉をこする手は止めずに竿をやさしく抜く。
(―――……あんま、にがくねぇな……)
味は人によって違うのかもしれない。
そんなこと、いままで考えたことも無かったけれど…。
最後のひと滴までやさしく吸い出すと、唇に付いたそれもぺろりと舐め取る。
足を震わせたままの下半身から身体を離し、はぁはぁと荒い息をこぼすその人を上から覗き込んで、
獄寺はごくりと唾を飲み込んだ。
半分ほどに開かれた瞼から覗く瞳は、とめどなくあふれた涙でしっとりと濡れそぼり、どことも分からない場所に焦点を結んでいた。
そして淡く色づく唇からは、熱い吐息と一緒に銀色に輝く唾液がこぼれ落ちる。
――…心臓が、どくん、どくん、と強く音を立てた。
そのまま彼のすぐそばまで顔を近づけ、その瞳を覗き込む。
「…………さわださん、………自分が今、どんな顔してるか分かってますか………?」
琥珀色に濡れた宝石が、一瞬、己に向けて焦点を刻む。
無言で見つめ合ったその瞬間に、彼は胸の内に何かが巻き起こったのを感じた。
そして誘われるように開いたままの唇に、ぴたりと添わせるように唇を重ね、彼の口内を味わった。
あまりの快感に頭が蕩けてしまいそうな予感を感じつつ、彼の背中に両手を差し入れ抱き込むと、きゅっと強く抱きしめた。
――…すると、シーツに投げ出されていた彼の腕が、ふいにゆるく首筋に絡んできて。
「―――…!」
(――――………やべぇ、………止まんねぇ)
じゅるじゅると音をさせながら深く口内を味わい、そっと唇を放すと獄寺はベッドサイドの棚を漁り、
普段自慰用に使用しているローションを手に取った。
「――――…さわださん、ごめんなさい。………すこし、無理させます」
放心したような表情の彼に顔を近づけ耳元で囁くと、手に取ったぬめりを彼の秘部にそっと塗り込めた。
びくっと揺れる彼の肩に、チュッとやさしいキスを落とす。
「………ぁあ、うぅ……、ぁぁぁ……」
くるくると入り口をやさしく愛撫した後、中指をそっとうずめて、爪で中を傷つけないように気を付けながら解してゆく。
――…たぶん、女にだってこんなに優しくしたこと無い。
この行為自体が自然の理から外れていて、受け入れる側に多大な負担を掛けるからなんて理由じゃ無く、
出来れば彼には快感だけを追い求めていてほしい、自分との行為に溺れてほしい、
もっとこの人の乱れる姿が見たい、と思ってしまった。
(………俺、頭おかしいのか………?)
フッと、口もとに笑みが浮かぶ。
(――…きっと俺はこの人に溺れてる………)
「…はぁぁ…、ふぅぅ」と絶え間なくあがる彼の息づかいを感じながら、なるべく負担をかけないようにと、ゆっくり指を増やしていった。
「―――………さわださん、3本入りましたよ……。苦しいですか……?」
顔を近づけて問い掛けると、彼が心なしかちいさく頷いたように見えたので、ゆるゆるとローションを足しながら中を暴いてゆく。
「………たぶん、このあたりだと、思うんスけど………」
男の絶対兵器「前立腺」を探しながら柔らかく波打つ襞に指を這わせると、ピクンと彼のうすい肩が跳ねた。
「――……!? っ!……ひぃっ、ぁ……ぁあん……!」
「……ん、これっスね」
彼がとめどなく嬌声を上げる箇所を強弱をつけて嬲ると、先程まで萎えていた彼の欲望がゆっくりと頭をもたげるのが
視界に映った。
「…………ふふ、さわださんはいやらしいですね。またそんなにして………。
でも今度は、俺にもいい思いさせてくださいね」
ずるりと指を引き抜くと彼の身体がぶるりと戦慄いたけれど、それに構いなく白い足を大きく開かせた。
パンパンに張りつめた欲望が、下着の中で汁をこぼしながらそれを待っている。
獄寺は煩わしい服をすべて脱ぎ捨てると、みだらに収縮をくり返すそこに固く猛った自分自身を宛がった。
クックッと数度それを押しつけるとぬめりの力を借りて、太いそれが彼の中へゆっくりと入ってゆく。
「――…ヒィッ……!……や、やぁっ…!…止めっ………」
彼の身体が逃げを打ったので、肩を掴んでやや強引に引きもどす。
琥珀色の瞳が大きく見開かれて、透明な滴がぼろぼろとこぼれ落ちて、シーツに丸いしみを作った。
「―――……きっつ……!………すみません……、ちょっと失礼しますね」
圧迫感と痛みに萎え始めた彼の欲望に指をからめ、やさしく抜く。
「…ぁっ、あぁんっ……!ぃやぁ……ぁあぁ………!」
すると苦痛しか訴えなかった彼の吐息に少しずつ艶が含まれ始めて、ぎゅっと自分を締めつけていた圧迫感が、ゆるゆると静まってゆく。
そしてその隙を逃さず、グッと腰を強く押しつけた。
彼は口を大きく開けて、熱い息を零していた。
あまりの圧迫感に声が出ないらしく、艶めいた吐息だけが唇から吐き出される。
「――――……すみません……、苦しいですよね、………ごめんなさい」
…………自分はずるい。
謝ったって、やさしく声を掛けたって、どうせ止めてはやらないんだから……。
ずぶずぶと濡れた筒に沈み込む衝撃は、脳天にまで駆け上がるような快感を覚えさせた。
自分の腰と彼の秘部がぴったりと重なり、ひとつになった事への後ろ暗い喜びが胸に沸く。
未だはぁはぁと苦しそうに涙を零す彼の目元にちいさくキスを贈って、
ゆっくりと腰を動かし始める。
「!!………あ、あぁぁ……!…ふぅん……、ぁぁああ〜〜………!」
彼の手が獄寺の二の腕を強く掴んだ。
食い込んだ爪がぴりっとした痛みを伝えたけれど、腰から這い上がる大きな快感に打ち消された。
「―――…さわだ、さん……、気持ちいいですか……?」
がつがつと彼の良いところに腰を打ちつけながら、桜貝のように淡く染まった耳に舌を絡め囁く。
「…んんんっ!―――…ぁぅん…!…ぃやぁぁ……っ」
弱い耳の中に唾液を送り、じゅるじゅると舐めまわす。
すると、獄寺を受け入れている彼の秘部がピクピクと痙攣して、中の襞がきゅっと絡みついてきた。
「――っ…!………やべ…、持ってかれそ……」
ぐっと射精感を堪えその波をやり過ごす。
目の前には恍惚な表情で涙をこぼす可愛い人のしどけない姿。
自分よりひとまわりちいさな欲望はふるふると立ち上がったままだ。
――…そんなものを見せつけられて、いくなという方が無理というものだ。
「クッ…、……さわださん、俺と一緒に、いきましょうね………」
するりと彼の竿に手をのばし、腰の律動と同じ速さでこすりはじめる。
「あぁぁぁっ………!」
投げ出されたその手のひらに空いている方の指を絡め、汗の浮いた額にやさしいキスを落とした。
大粒の汗が顎や髪をを伝って、彼の身体にちいさなしみをつくった。
高まってゆく快感に脳が白く焼けてゆく。
――――……やがて、ふたりいっしょに熱い滴をほとばしらせた。